正常位は本当に正常か?

 友人Fが言いました。「どうして正常位って正常位っていうんだろうな。なんかほかの体位が異常みたいじゃん」と。

 正常位というのは向かい合って結合するスタイルのことを言います。どうしてこのスタイルが「正常」位とよばれるのか。では、男が後ろからパコパコしたり、女が上になって腰をクネクネしたり、口内にドピュッと発射するスタイルは「異常」というのか。友人Fの様に疑問に思ったことのある方も多いでしょう。

 ここでは「正常」という言葉の意味について考察しなければなりません。正常というのは「正しいこと」です。ここで「正しいこと」とはどういった意味でしょうか。絶対的な正しさでしょうか。違うでしょう。ここで言う、「正しさ」とは多数派であるということです。

 たとえば、100人中95人が騎乗位でセックスやっていれば、騎乗位が正常位と呼ばれていたことと思います。実際、人間以外の動物のほとんどは後背位(バック)で結合するのです。動物世界に於いてはバックが正常なのです。

 人間のセックスという物は全て「異常」と考えられなくもない、という話があります。セックスの目的、それは元来は子孫を残すための行為であったはずです。ところが現代人のほとんどは快楽、コミュニケーション、その他の目的の為にセックスをします。子孫を残すという目的を忘れかけています。

 「どうして正常位って正常位っていうんだろうな」という言葉は、もし仮に正常位が本当に「正常」であると考えられている社会であるならば、絶対に発せられないはずです。実際、現在でも宗教的理由から正常位以外を「異常」であるとして禁止している地域さえあると言います。こういった場所ではFのような発言は有り得ないでしょう。

 Fのような発言にあるように、現在の日本ではセックスの形は多様化しています。かつては変態と考えられていた行為、つまり異常な行為も、現在では普通のカップルが行うようになりました。たとえばフェラチオなどは、数十年前にはごく一部のカップルだけが行う異常行為と考えられていたといいます。ゲイなども時の流れとともに個性の一つとして認められつつあります。

 なぜフェラチオやゲイが認められつつあるか。それはその行為が楽しいからだと思います。快楽であるからだとおもいます。

 正常、異常は周囲が決定します。いわゆる「モラル」や「常識」です。わたしは、子供を作るため以外にセックスを許されない社会をみて、「なんてつまらない社会なのだ」と思います。マスターベーションが変態行為を見なされており、見つかっただけで懲罰が与えられた時代を不幸な時代だと思います。つい100年前そんな時代があったのです。

 正常位というセックスの一形態を考えるだけで、いかに正常や異常が相対的なものであるか、そして移ろいやすいものかがよく分かります。

 もちろんこれは性に限りません。

 風呂に毎日入り体を清潔にする、健康に気を配り食べ過ぎない飲み過ぎない、出来るだけ有機栽培の物を食べる、肉ばかりでなく野菜も食べる、好き嫌いをしない、早寝早起する、インターネットをしすぎない、ゲームは1日1時間、遊びすぎない、勉強しすぎない、授業ではノートをしっかり取る、遅刻はしない、タバコは吸わない、責任感を持って行動する、髪を染めない、ヒゲを伸ばさない、鼻にピアスを空けない、良い友達をたくさん作る、良い大学に入る、良い会社に入る、誰にでも笑顔で、何事も適度に…

 「変態と呼ばれることを恐れるな」。これがわたしのモットーです。

 

*おまけ

 正常位が正常位と呼ばれるようになった背景には、明治以降の西洋文化流入、とくにキリスト教の影響が強いように思われます。キリスト教ではバックや騎乗位は「動物的」だ、として禁止されていたらしいので。

 春画(エロい錦絵)があふれ、いわゆる四十八手などが知られるように江戸時代の一般庶民は性におおらかであったといわれています。(という話です)

 江戸時代には正常位は「本手」と呼ばれていたようです。「正常位」にしても「本手」にしても、向かい合ってチンポを挿入する形がスタンダートだったことが分かります。

 しかし、「正常位」と「本手」にはニュアンスに大きな、決定的な差があります。「正常位」の方がほかの体位を「異常」として退ける印象があるのに対し、「本手」はいろいろな体位のヴァリエーションの一つというニュアンスがあります。

 で、江戸時代にいろいろな体位でセックスが行われていたかどうかはわからないのですが、わたしは「春画を参考にしつつ、やっていたに違いない!」と思います。たとえば、こんな会話が交わされたと推測しています。

 

龍馬 「なぁー、おりょう、この春画みてみ!」

おりょう 「えっ、いやよ恥ずかしい」

龍馬 「なぁ、ほら俺たちもさ、こんな風にやってみようよ」

おりょう 「ダメよ…」

龍馬 「この反り観音っての良くない?」

おりょう 「えっ…そんなアクロバティクなの無理」

龍馬 「いいじゃんいいじゃん、な?いいだろ?」

おりょう 「いやっ…」

龍馬 「言葉ではイヤイヤいってても体は正直だよ…俺は土佐の加藤鷹と呼ばれるおとこさ…ふっおれの指テクを見せてやる!」

おりょう 「だめっ!そんなフィンガーテク使われたらわたしすぐいっちゃう!あぁん!」

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