マシュマロウンコ

 純粋無垢だった少年のころのわたしは、アイドルが焦げ茶色のウンコをするということなど、とうてい信じられませんでした。というより、信じたくありませんでした。さらには体調が崩れれば下痢をすること、ちょっと笑ったすきに屁をこいてしまうこと、たまには屁だけでなく具まで出てしまうこと、ウンコが普通のひとと同じようにくさいこと、よく見たら昨日食ったとうもろこしの黄色い断片がウンコの中に混じってたりすることもある、ということなどは想像も及びませんでした。

 少年時代、わたしの想像の中でのアイドルのウンコは、焦げ茶色ではなく、くさくもなく、無論とうもろこしの断片が入っていることもありません。アイドルのウンコは白く、ふんわりとしていて、ストロベリーのほのかな香りを漂わせたものでなければなりません。つまり、マシュマロのようなウンコなのです。肛門からヌルッと出てくると、ほのかにストロベリーの香りが周囲に漂い、もちもちっとした白い物体が便器の中で浮遊するのです。つまり、反射的に「頬張りたい。うまそう。というかお雑煮のなかにも入れたい!お土産にもいいかも!」とおもうような素敵なウンコだったのです。

 そんなわたしでも、少年から青年になるにつれ、現実に立ち向かって行かなくてはならない、ということに気づかされました。たとえば人間は、どんな人間でさえも、母親と父親がセックスをした結果、母親の股間からヌルッと生まれてきたと言う現実。わたしは何とかこの現実を受け入れることができました。しかし、やっぱりアイドルのウンコに関してだけは譲れないのです。わたしの中でアイドルのウンコは永遠にマシュマロウンコです。

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