相談してくれ

 人並みはずれて薄情で、自己中心的で、つまり自分大好きなわたしは、人から相談事を受けると言うことがあまりにありません。たいしたことのない些細な相談ならまだしも、重要な問題の相談ともなると、ほとんど相談を受けることが無いと言った方が良いでしょう。そんなわたしでも相談をしてくれる人がごく稀にいて、それはたいへん感動する出来事です。わたしが信用され頼りにされているという証拠だからです。

 先日、そんな非常に珍しい出来事があり、つまり相談を受けたわけですが、なんの相談かというと恋愛相談みたいなものです。ユキちゃん(仮名)がいうには、彼氏に何回電話してもつながらず、さらには「現在、この電話番号はつかわれておりません。ツーツーツー」となってしまって、きのうは一日中なきっぱなしだったの、目が腫れちゃうくらい泣いちゃったの、どうすればいいの、もうわたしダメかもしれない、わーん、という話でした。

 わたしの脳裏には「恋愛相談から恋愛関係に発展するというケースはよくあるよね。」という世間一般でまかりとおっている一連の言葉が頭の中で走馬燈のように駆けめぐり、反芻されまくりました。というわけで、これはチャンス、というかめちゃめちゃチャンスだぞ、と思ったのも当然のなりゆきで、「うーむ、じゃあ、おれが慰めてあげるよ、ヘヘヘ。」、とか調子に乗って言ってしまったのでした。するとユキちゃん、傷ついたブロークン乙女心をこの男に慰めてもらっちゃおう、と思ったのか、「・・・うん。」とつぶやくようにいうと、わたしの手をそっと握ると、柔らかい唇をそっと重ねてきました。わたしはユキちゃんを包み込むように抱きしめると、マシュマロのように柔らかい豊満な二つの乳房がわたしの胸にあたりました。そしてユキちゃんはわたしの耳元で「慰めて・・・・。」とささやきました。

 なんてことは全くありませんでした。恋愛相談を受けたのは本当です。というか、なんかこんな妄想を書いていると非常に寂しい感じになってきて、わたしが相談に乗って欲しいくらいの勢いで寂しくなってきたのでおしまいにします。やっぱ、わたしは相談に向かない人間だということがわかりました。

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