15の夜

 恥ずかしい話ではありますが、わたしも世間並みにいろいろなエロビデオを見てきました。そのなかでもとりわけ衝撃的で、わたしの人生観さえ狂わせたとさえ思えるビデオがあるのです。あまりにも衝撃的なそのビデオはビデオ屋で借りたわけでもお店で買ったわけでもなく、ある特殊なルート、すなわち特殊な友人から「これはスゲエぞ」といわれて手に入れたのですが、実にショッキングでした。

 たしかに、「スゲエ」ビデオでした。タイトルは忘れしまいましたが、いわゆる「屁ビデオ」。いわゆるってなに、って感じですが、つまり屁なんです。屁ですよ、屁!なんと女優が空気を肛門に入れられて、屁をぶぅぶぅこいている、しかもそれだけ。しかも屁をしている女優はエプロンしてる!という人知をこえた凄まじいシロモノ。わたしの世界観や想像力を遙かに越えており、UFOで連れ去られて新しい惑星に降り立ち、初めて異星人にであったその日のディナーみたいな、戸惑いと驚きが入り交じった複雑な感じがしました。なにがすごいって屁をこいているだけなのだ。しかもエプロン!

 ほんとうにエロビデオなのかどこがエロいのかすら分かりませんでしたが、ケツが出ていることは出ていたのでエロビデオなのでしょう、多分。しかし屁を「いやぁー、はずかしいー、もういやぁ」とかいいつつスゲエどエライ音を出しながら放っているときは、おかしくておかしくて笑いがとまりませんでした、わたし。しかも女優もおかしくてわらってましたよ、しかもスタッフも笑ってましたよ。どこまで本気か分かったモンではありません。

 それ以上に気になったのがなぜ友人があのビデオをもっているのか。しつこく尋問したのに教えてくれませんでした。

 まだまだ世の中は広い、オレは世界を知らなすぎる、と思いました。「こんなエロビデオでもヌけるヤツもいるんだ、オレなんか普通じゃないか、なんでもいいんだ!!誰にも縛られたくない!!」と心から思いました。
 自由になれた気がした15才の夜のことでした。

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