星を見よう

 東京の空はあまりにもダーティで汚い。東京生まれ東京育ちの生粋の東京っこであるわたしは、小学5年の時に箱根で空を眺めて初めて夜空にはたくさんの星が輝いていると言うことをディスカヴァリーして発見したのだ。東京は星が見えない。星がみたい。星がみたい。満天の星空をみたい。満点の星空を見ながらかわいい彼女と語り明かしたい。と、星と言えば日本中でもっても歴史のある場所と思われる奈良で、遙か昔に思いを馳せながら星を眺めるのもなかなかオツなモンではなかろうか。

「ほら、夜空をごらん。」(左手は彼女の腰にまわし、右手で空を指し示しながら)

「まぁ、星がいっぱいね。」

「きれいだなぁ。」

「えぇ、きれいね。」

「星のことを英語でスターって言うんだぜ。」

「すごーい!まーくんってなんでも知ってるんだね。」

「ふっ、まぁな。」

 と話が盛り上がることは、まずもってしてカナリの確率で間違いない確実なことであろう。そこで男ならこう切り返すべきである。

「でもな。」

「うん、なーに、まーくん。」

「由香里、君の方がずっとキレイだよ。」

「あら、いやだ。まーくんったら。」

 と、なんともいい感じになって、さてここから接吻です、キッスです、ってところで、奈良名物の鹿が通りかかって、おもむろに巨大な黒いパチンコ玉みたいなフンをパラパラパラパラし出すモンだから、雰囲気なんてみーんなぶち壊しで動転した由香里がまーくんの唇にかみついちゃったりして血がピューピュー出るわ、さぁ、大変。というわけで、東京には東京のいいところがあるので、まぁ星が見えなくても我慢しましょう、ってわけ。奈良なんか行くな。

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