監督：スタンリー・キューブリック

出演：マシュー・モディン / アダム・ボールドウィン / ビンセント・ドノフリオ / アーリス・ハワード

 

ベトナム戦争もの。

だいたいどんな映画でも見終わった後すぐに「あぁ良い映画だった」とか「くだらねぇーつまんねぇー」とかすぐ思うのだが、この映画はなんだかよく分からない。良い映画のような気もするが凡庸な映画の様な気がしないでもない。その大きな一因は前半と後半がほとんど別の話といっても良いくらい独立した作品になっているということだろう。

前半半分ではあまりにも厳しい非人道的とさえいえる海軍の訓練の様子が丹念に描かれている。訓練を通して一人の「デブ」の訓練生が狂っていき、訓練学校最後の日をまえにしてついに指揮官を殺し、自殺してしまう。最後にトイレで教官を射殺し、自殺する場面は青く暗いトイレと飛び散る鮮血のコントラストが強く、つよく印象に残った。

後半は訓練学校を無事に卒業し、殺人兵器と化した兵士たちが実際にベトナムに行き、闘う様子が描かれている。後半のクライマックスとなる場面は狙撃兵を追いつめる場面で、追いつめた結果その狙撃兵は少女で、その少女を結局射殺する、という話だ。

前半をみててミロス・フォアマンの『カッコーの巣の上で』を思い出した。後半はボロボロに破壊された灰色と黒色の建物や、ベトナムの熱帯植物や立ち上る黒い煙や、まっ赤な戦火などが非常に美しく、すばらしいとおもったがストーリーは凡庸であるように思う。

映像の、構図と色の美しさはすばらしい。だが内容は微妙だ。同じストーリーでキューブリックじゃない人が取ったら駄作になったとしか思えない。

あと、ネットで見てたら「戦争万歳の映画」なんて書いている人がいたが、これをどうみたらそうみえるんだか不思議だ。ベトナム戦争ものだったら『グッドモーニング・ベトナム』のほうがおもしろかったような気がする。