ウルトラの結婚式

 ウルトラの母の目は、涙に濡れていた。

 ウルトラの父が、ウルトラの母の肩に優しく手を置き、「ウルトラの母さん、よかったじゃないか、ウルトラも、家庭を持つことができた。わしらも、うん…。一安心だ。」とゆっくりと、一言一言噛みしめるように言った。

 ウルトラの父の声も、かすかに震えていた。

 ウルトラの母は、「そうね。嬉しいことなんだから、涙なんて浮かべてちゃだめよね。笑顔でいなきゃね。そうよね、ウルトラの父さん。」と、涙で湿ったハンカチを握りめながら言った。

 ウルトラは今日、ウルトラの嫁と結婚する。

 式場にはウルトラ一族、そしてウルトラの嫁一族が集まっていた。ウルトラの甥、ウルトラの姪、ウルトラの姪の盲導犬、ウルトラの叔父、ウルトラの祖母、ウルトラの祖父、ウルトラの祖父の弟、ウルトラの嫁の叔母の弟の継母、ウルトラの嫁の叔母の弟の継母の妹の娘…あちこちに懐かしい顔が見える。

 ウルトラの友人代表として挨拶をしたのが、ウルトラの大学時代の友人の中で最も鼻が大きかった友人だ。ウルトラの大学時代の友人の中で最も鼻が大きかった友人は、「ええと、友人代表として挨拶をさせて頂きます、ウルトラの大学時代の友人の中で最も鼻が大きかった友人です。ウルトラとの出会いは、ええ、そうですね、ウルトラのキャバクラに言った時から始まりまして…」

 その時である。

 ウルトラのはとこが、式場の入り口を指さしながら、式場全体に響き渡る声で叫んだ。

 「お前は誰だ!」

 一瞬にして式場は、しんと静まりかえった。

 ウルトラ一族とウルトラの嫁一族の視線は、一斉に、入り口に立つ男に注がれた。ウルトラのはとこが指さす先には、肩幅の広い黒スーツの男が不気味な微笑をたたえながら、立っていた。

 やがて男は、背中を向けたかと思うと、首だけクルリと回し、式場全体を鋭い視線で見据えながら、ゆっくりと、そして、式場全体に響き渡る声で叫んだ。

 「ウルトラの赤の他人だ!!」

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