夏風
エメラルドグリーンの海は、波一つ無かった。太陽は日に日に弱くなり、鳥たちは秋の香りを南から運んできた。鳥たちの歌声が水面に反射し、遙か上空まで響いていた。
 
婆「おじぃさんや、きょうも、いい天気ですなぁ」
爺「そぉじゃな!ばぁさん!」
婆「ところで、ばあさん、昨日のテレビはおぼえてますか?」
爺「もちろんだよ、わしらの息子も立派になったなぁ。」
婆「そうですねぇ。」
爺「うんうん。」
婆「・・・・・」
爺「・・・・・」
婆「・・・・・ぐふっ!ぐわっ!かあっーーーー!」
爺「どどど、どーなさった!ばあさん!!だいじょぶか!」
婆「かあぁーーーーーーー」
爺「おぉぉ!」
婆「ペッ!!!!」
爺「おおおおぉぉ!!」
婆「だいじょうぶですよ、おじいさん。痰がノドに絡まっただけですから。」
爺「そ、そうか。」
婆「もうすぐ秋ですね。」
爺「だな。ハチマキはもういらないな。」
婆「そうですね。」
 
土手では子ども達の声が空高く舞っていた。
戻る