母と息子
「ヨシオちゃん、部屋にこもってばかりいないで、でていらっしゃい、もうすぐ、ご飯ですよ!」
 リビングから母親の声が聞こえる。
「ハーイ、いまいくよ。」
 ぼくは、とっさに手に持っていたダッチワイフの取扱説明書を机の中にしまうと、リビングにスキップをしていった。
「ヨシオ、最近学校はどう?お友達にいじめられたりしてない?」
母は台所できんぴらゴボウを炒めながら、ぼくに話しかけた。
「どうって・・・、別に何も変わったことはないよ。それに、いじめられてもいないよ。それよりママ、会社はうまくいってるの?」
母は調理の手を一瞬止めて、ぼくの方をみて言った。
「うん、絶好調よ。昨日ね、エリザベスの売り上げが二万体を越えたの。」
「え、ほんとに?ぼくもさっき使おうかと思って説明書を読んでいたところだよ。」
「あら、おりこうさんね!毎日悪いわね、昨日は理香三号、おとといはジュディ(改良版)・・・ほんとごめんね。」
「いや、べつに・・・、そんな水くさいこというなよ。」
「それよりあなたイカくさいわよ。」
戻る

母と息子