甘い生活

 完全な密室だった。

 二人きりだった。長い沈黙のあと、優香はながい沈黙に耐えきれなかったかのように声を発した。いつもの優香の声ではないかのように、生々しくぼくの耳に響いた。

「俊介、わたしもうこんな生活はたえられない。」

「・・・なぜだ?ぼくらはこうやってずっと暮らしてきたじゃないか?それをなぜ突然。」

 ぼくは突然腹に強い痛みを感じた。

「ヤバイ、なんか急に腹が痛くなってきた。」

 ぼくは急いでトイレに駆け込むと、速攻で用を足した。なんとかトイレまではもった。

「ふぅ、なんとか・・・いやぁ、水みたいな下痢だったよ。」

「キタねぇーつーの。」

 優香は吐き捨てるように言った。再び、沈黙が部屋を支配した。十分くらいたっただろうか、こんどはぼくが沈黙に耐えられずに声を発した。

「ファイトーいっぱぁーつ」

 ぼくの声に続いて優香がハリのある声で続けて叫んだ。

「オロナミンC!!」

「や、やるなぁ優香。」

「そうかしら?」

「あぁ、そうさ。」

 何かを確かめるように、ぼくは優香を強く強く抱きしめた。

「やっぱりオレにはおまえしかいないんだ、優香。」

 優香の肩が微かに震えていた。聞こえるか聞こえないか、消え入るような声で優香は返事した。

「ウン・・・・」

 返事なんか無くてもぼくにはすべてが分かっていた。

「・・・・・コ」

 やっぱり。

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