わたしの好きな食べ物

 焼き肉というものは、なんであそこまで美味いのだろう。

 肉をとり、鉄板に乗せる。ジュゥゥゥという音と共に香ばしくも香しい白い煙が立ち上る。このとき、鉄板の上に乗り出しすぎると白い煙が目にしみてしまうので、いくら焼き肉に心が沸き立っていたとしても乗り出しすぎてはいけない。ここは、しばし落ち着いて片面が焼けるのをまつ。そろそろ適度に焼けてきたハズ、と思ったら、肉をゆっくりうらがえす。このときあまりに焦ってハゲしく裏返そうとすると肉汁が跳ねて顔にピチッとついて、やけどしてしまうので注意しなければならない。

 ここらへんまで来るともう、ガマンの限界になって焼き上がるのを待てなくなって、「おらもうガマンできねぇ、食っちゃうゾ」なんて輩もいるかもしれないが、それはイカん。もう口の中はガマン汁でいっぱいであるだろうが、ガマンしなければならない。女の子にとっては雰囲気が大事だからで、いい雰囲気になるまで待たなければならない。赤い部分が大体なくなってきたら、おもむろに肉を皿にとる。このとき焼き肉のたれは、ゴマだれでもいいが、標準の焼き肉のたれにつける。なぜならそっちのほうがうまいから。ぜったいに美味い。そこで標準焼き肉のたれにつけ、おもむろに口に運ぶ前に、ちょっとばかり「フーフー」してから口に入れる。

 口の中にはいった肉をハフハフしながら軽くかんだその瞬間、ジュワッと肉汁が肉から溢れ、それの肉汁に焼き肉のたれが絡まる。肉のエキスと焼き肉のたれが複雑にからみあい、えもいわれぬ極上のハーモニーをかなでる。まさに生きていてよかった、おれはこのために今日まで生きてきたのだ。この瞬間のために働いてきたのだ。この瞬間のために勉強してきたのだ。人生捨てたモンじゃない。うまい。うまい!うますぎる!!なんてうまいんだ!!こんなことがあっていいのか!!といった感じになる。

 あー焼き肉くいてぇ。

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